真空の期待値

微積分を用いた高校物理教程

微分方程式の基礎:単振動の微分方程式

単振動の微分方程式について数学的な解説を加えていく。

\begin{equation} \ddot{x}=-\omega ^2 x \end{equation}

 \ddot{x}とは?

いきなり出てきて驚いたかもしれない。 \ddot{x} とは、 x の時間による二階微分を表す。あまり意識されないが、変位 x, 速度 v, 加速度 a などの力学変数は時間  t函数である。速度と加速度は、変位に対して

\begin{equation} v(t) = \frac{dx(t)}{dt} = \dot{x} \end{equation} \begin{equation} a(t) = \frac{dv(t)}{dt} =\dot{v} = \frac{d ^2x(t)}{dt ^2} = \ddot{x} \end{equation}

の関係にある。変数の頭の上にあるドットの数だけ時間微分していると思ってほしい。

微分方程式について

これまで習ってきた方程式は、普通の数(実数・複素数)が答えになっていた。

\begin{equation} x ^2 + 3x + 2 = 0 => (x+1)(x+2)=0 \therefore x = -1,-2 \end{equation}

今回扱う微分方程式は、函数 x(t) を見つけるのが目的である。つまり答えは数字ではなく函数である。そこが普通の方程式(代数方程式)との違いだ。

単振動の微分方程式

単振動の微分方程式

\begin{equation} \ddot{x}=-\omega ^2 x\end{equation}

は二階の微分方程式である。ではこれをどう解くか。厳密にこの方程式を解く方法を語るには、数学の知識が少々足りない。実はここで行列の知識を使うと順を追って説明しながら解けるのだが、これについては近い未来に後の記事で触れることにしよう。 それでは解く方法がないのかというと、そんなこともない。常微分方程式の解の一意性定理がある限り、あてずっぽうだろうが神の啓示だろうがなんでもいいので解を見つけてしまえばいい。それさえできればどんな方法でも解いたことには変わりない。実際、単振動の微分方程式ですら天下り式の解説がほとんどだろう。

とりあえず天下り式の解法を考えてみる。二階微分して符号が反転して元に戻る函数とは何か? これは三角関数しかない。逆に \sin\omega t, \cos\omega tがこの方程式を満たすことは明らかである。また、それぞれの函数を定数倍したものが微分方程式を満たすこともすぐに確認できる。とすれば、これらの和

\begin{equation} x(t) = C_1\sin\omega t + C_2 \cos\omega t \end{equation}

がこの微分方程式の一般解にあたる。実はこれでもう解けている。 しかしもう少し変形しておこう。三角関数の加法定理

\begin{equation} \sin (\theta+\delta) = \sin\theta \cos\delta + \cos\theta \sin \delta\end{equation}

を意識して

\begin{equation} x(t) = \sqrt{C_1 ^2 + C_2 ^2}\left(\frac{C_1}{\sqrt{C_1 ^2 + C_2 ^2}} \sin \omega t+\frac{C_2}{\sqrt{C_1 ^2 + C_2 ^2}} \cos \omega t\right)\end{equation}

と変形しておこう。すると

\begin{equation} \left( \frac{C_1}{\sqrt{C_1 ^2+C_2 ^2}} \right) ^2+ \left( \frac{C_2}{\sqrt{C_1 ^2+C_2 ^2}} \right) ^2 = 1, \left|\frac{C_1}{\sqrt{C_1 ^2+C_2 ^2}}\right| \leq 1, \left|\frac{C_2}{\sqrt{C_1 ^2+C_2 ^2}}\right| \leq 1\end{equation}

が成り立つから、

\begin{equation} \cos\delta = \frac{C_1}{\sqrt{C_1 ^2 + C_2 ^2}}, \sin\delta = \frac{C_2}{\sqrt{C_1 ^2 + C_2 ^2}}, A=\sqrt{C_1 ^2 + C_2 ^2}\end{equation}

と置くと、

\begin{equation} x(t) = A\sin(\omega t + \delta)\end{equation}

のようにまとめることができる。これが解になっていることは各自確かめられたい。

もっと天下りじゃない方法で解けない?

ここまで天下り的な解法を紹介してきたが、実はもう少しきちんと導出する方法がある。その方法を次回から紹介していこう。 方針としては、まず一階の微分方程式を解いて、その類推から行列を用いて導出することにする。ただし、かなり長い道のりになるので、現時点で数学に興味のない人は飛ばしてもらって構わない。

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