すべての物理は、ニュートンの運動方程式
を出発点とした派生に過ぎない。これは量子力学や相対性理論などの高等な物理学においても通底する大原則である。
力がはたらくとその向きに力の大きさに比例する加速度が生じる。この関係からすべてが出発するのだ。
ここで の具体形として変位
の逆符号
に比例する力を考えてみよう。先に式ありきの議論になるが、物理的な具体例は後ほど検討していきたい。
比例定数を
とすると
\begin{equation} ma=-kx \end{equation}
ところで加速度とは変位の時間による二階微分であるから
\begin{equation} m\ddot{x}=-kx \end{equation}
変形して とおくと
\begin{equation} \ddot{x}=-\omega ^2 x \end{equation}
となる。
この微分方程式の解は三角関数に限られる。なお、三角関数以外の解がないことの証明は難しい。常微分方程式の解の一意性定理というものがあって、たいていの場合は解の「概形」をひとつ見つければ他の形を探す必要はないのだ。だから最悪当てずっぽうでもよいのでひとつ「概形」を見つけるのが微分方程式の解き方の一つである。
逆に三角関数がこの微分方程式を満たすことは明らかである。サインにせよコサインにせよ、二階微分すれば符号が変わるからだ。
ただ、この「あてずっぽうの解」を見つけてからが少し大変である。実際、も
も微分方程式を満たす関数である。このような函数は無数にあるので、それらを統一的に書くとすればどうすればよいだろうか。
本書で考えている微分方程式は、たいていが線形微分方程式と呼ばれる種類にあたる。これはどのような微分方程式かというと、解となる函数の定数倍や、二つの解の和もまた微分方程式の解になっているようなものだ。このような微分方程式は、 の微分同士の積がないことが条件だ。
や
のような項が入っていると、この和と定数倍も解になるという性質は成り立たなくなる。(一方で、非線形な微分方程式でも解の一意性は成り立つ。探すのが面倒になるだけだ。)
では解を書き下してみよう。も
も微分方程式を満たす関数であるから、これらの定数倍と和をとって、
\begin{equation} \x(t) = C_1 \sin \omega t + C_2 \cos \omega t \quad C_1,C_2:const. \end{equation}
と書ける。これですべての解の可能性を網羅したことになる。
あるいは次の書き方をしていいかもしれない。
\begin{equation} x=A\sin(\omega t+\delta) \end{equation}
ただし は任意の定数である。
もそうだったが、これらは具体的な設定の下で値を決めることができる。例えば、運動を始める最初の位置と速度が設定中に現れるが、それが決まると計算によって具体的な係数がわかるようになる。
この式はサインで書かれている。別にコサインでもよいのだが、どっちにしろを調整すれば同じこと(
すればよい)なので慣例的にサインを使うことにする。
ここで簡単にためとすると、
\begin{equation} x=\sin\omega t \end{equation}
となる。
これを一回微分してみよう。速度は
\begin{equation} v=dx/dt=ω\cosωt \end{equation}
もう一回微分すると加速度が出て
\begin{equation} a=dv/dt=-\omega ^2\sinωt \end{equation}
ここでまたサインが出てきた。変位の定数倍になっているので、
\begin{equation} a=-\omega ^2x \end{equation}
が成り立つ。無事に三角関数が解となっていることがわかった。
ここで記事は二つに分岐する。微積分を用いて物理的考察を加えたい場合は、以下の記事からはじまるシリーズで単振動の考察を続けることにしよう。
一方で、数学的に置いてきぼりになってしまったのでもう少し丁寧に解説が欲しい場合には、以下のシリーズから簡単な微分方程式の解き方を学ぶのがよい。
個人的におすすめの勉強法だが、まず物理的考察を深めるほうにいって、数学で詰まったら都度確認するほうが”微積物理”っぽい動きになる。あくまでも学習したいのは物理であるから、数学はツールとして使えるようになれば最低限クリアしたと思っていいだろう。あまり深入りすると逆に物理がわからなくなってしまう。大学生になってからも、数学の渦に取り込まれてしまった人を一定の割合で見かけるのだが……。