いま解いている問題を再確認する。

このばね振り子の運動を記述する微分方程式は、
\begin{equation} \ddot{x} + 2 \mu \dot{x} + \omega_0 ^2 =0 \end{equation}
特性方程式は、
\begin{equation} (s + \mu) ^2 - \mu ^2 + \omega_0 ^2 =0 \end{equation}
この式から、どうやら の符号次第で解の性質が変わりそうだということがわかる。
今回は流体抵抗が小さいとき、すなわち特性方程式が複素数解をもつ場合について考えてみよう。
減衰振動(流体抵抗が小さいとき)
流体抵抗を代表する係数 と抵抗がないときの単振動の角振動数
を比較して
<
のとき、特性方程式の解は次のようになる。
と置くと、
\begin{equation} s_1 = -\mu + i \Omega, \quad s_2 = -\mu - i \Omega \end{equation}
一般解は、
\begin{equation} x(t) = C \exp(-\mu t + i \Omega t) + D \exp(-\mu t - i \Omega t) \end{equation}
くくりだして、
\begin{equation} x(t) = \exp(-\mu t) (C \exp(i \Omega t) + D \exp(-i \Omega t)) \end{equation}
さらに三角関数の合成を用いると、
\begin{equation} x(t) = A \exp(-\mu t) \sin(\Omega t + \delta) \end{equation}
となる。
抵抗のない場合との比較
全く抵抗がない場合、単振動を記述する微分方程式の一般解は次のようであった。
\begin{equation} x(t) = A \sin (\Omega t + \delta) \end{equation}
比較すると、指数関数 倍だけ異なっていることがわかる。この部分は指数減衰といって、急速に運動が減衰する様子を表している。それに三角関数がかかっているので、流体抵抗がある場合のばね振り子は振動しつつ急速に振幅が減少していくことになるだろう。
物理的考察
具体的な問題設定のもとで観察してみよう。
この方程式が記述できる現象の設定にはいくつかのバリエーションがある。まず安直には、床の摩擦力を無視したうえで空気抵抗を加味するというものだ。しかしこれはいささか現実的でないと思われるかもしれない。もしそうなら、こういうのはどうだろうか。水中にばね定数の大きなばね振り子があって、水の流体抵抗を受けて減衰するという設定だ。もっと現実的には、油のような粘性のある流体の中にあるばね振り子の運動と考えてもよい。
いずれにしても、この解から分かるようにばね振り子は左右に振動しながら減衰する。振動数は で代表され、減衰の度合いは
で特徴づけられる。
では、時刻 のとき、初期位置
, 初期速度
のときの運動はどのようになるだろうか。
一般解を再掲する。
\begin{equation} x(t) = A \exp(-\mu t) \sin(\Omega t + \delta) \end{equation}
これを時間で微分すると速度が得られる。
\begin{equation} v(t) = \dot{x} = A \exp(-\mu t)( -\mu \sin(\Omega t + \delta) + \Omega \cos(\Omega t + \delta)) \end{equation}
ここに初期値を入れてみよう。すると、
\begin{equation} x(0) = A \sin \delta = x_0 \end{equation}
\begin{equation} v(0) = A( -\mu \sin \delta + \Omega \cos \delta) = v_0 \end{equation}
この連立方程式を解きたいが、直接を求めるのは少し大変だ。そこで
の値を求めよう。
\begin{equation} A\sin\delta = x_0, A\cos\delta = \frac{v_0+\mu x_0}{\Omega} \end{equation}
ただ、このままだと様子が見づらい。手戻りになってしまうが一般解を書き直す。加法定理を用いて三角関数を分解しておこう。
ここにAと を代入してみよう。
気合いで一つの三角関数にまとめることはできるが、このままでも運動の解析はできるからこれを一般解としよう。
ここから実際の運動をシミュレーションしてみよう。初期位置を1に正規化し、初期速度は0とする。すなわち「静かに手を離した」場合に相当する。
この場合の特殊解は次のようになる。
この特殊解の挙動を見てみる。
まず の場合を見てみる。運動の x-t 図は次のようになる。なお、描画にはRust の plotters クレートを用いた。運動時間は40秒、刻み時間は0.01秒である。

では流体抵抗を大きくしてみよう。 の場合の図は次のようになる。

逆に流体抵抗を小さくするとどうなるだろうか。 の場合の図は次のようになる。

たぶんこの図が一番わかりやすいだろう。ばね振り子は振動しながら減衰し続けていくが、この減衰の仕方は指数関数的である。包絡線を目で追ってみると、 のように肩が負の数の指数関数が何となくみえそうではないだろうか。
念のため、流体抵抗が全くない場合も見てみよう。

このように、 の極限ではきちんと理想的なばね振り子の運動に戻ることが分かった。
では逆に の場合や、
>
の場合はどうなるだろうか。次項で見ていきたい。