真空の期待値

微積分を用いた高校物理教程

流体抵抗によるばね振り子の減衰振動(2)

いま解いている問題を再確認する。

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流体から抵抗力を受ける水平ばね振り子

このばね振り子の運動を記述する微分方程式は、

\begin{equation} \ddot{x} + 2 \mu \dot{x} + \omega_0 ^2 =0 \end{equation}

特性方程式は、

\begin{equation} (s + \mu) ^2 - \mu ^2 + \omega_0 ^2 =0 \end{equation}

この式から、どうやら \Omega ^2 =  \mu ^2 - \omega_0 ^2 の符号次第で解の性質が変わりそうだということがわかる。

前回は、流体抵抗が小さい時の運動を見てきた。指数関数的に減衰しながら振動する様子が見られただろう。

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今回は流体抵抗が大きいとき、すなわち特性方程式が実数解をもつ場合について考えてみよう。

過減衰(流体抵抗が大きいとき)

流体抵抗を代表する係数  \mu と抵抗がないときの単振動の角振動数 \omega_0 を比較して \mu ^2 >  \omega_0 ^2 のとき、特性方程式の解は次のようになる。

 \Omega = \sqrt{\mu ^2 - \omega_0 ^2} と置くと、

\begin{equation} s_1 = -\mu + \Omega, \quad s_2 = -\mu - \Omega \end{equation}

一般解は、

\begin{equation} x(t) = C \exp(-\mu t + \Omega t) + D \exp(-\mu t - \Omega t) \end{equation}

ここで  r_1 = \Omega - \mu , \quad r_2 =  \Omega + \mu を用いてまとめると

\begin{equation} x(t) = C\exp(-r_1 t) + D\exp(-r_2 t) \end{equation}

となる。

抵抗が小さい場合との比較

流体抵抗が小さい場合、単振動を記述する微分方程式の一般解は次のようであった。

\begin{equation} x(t) = A\exp(-\mu t)\sin (\Omega t + \delta) \end{equation}

比較すると、流体抵抗が小さい場合には指数減衰×三角関数の形をとっていたところ、流体抵抗が大きい場合にはもはや三角関数の部分が見当たらない。これはどうやら、振動せずに減衰するだけの現象がみられそうだと推察される。

物理的考察

具体的な問題設定のもとで観察してみよう。 では、時刻  t=0 のとき、初期位置  x_0 , 初期速度  v_0 = \dot{x} = v_0 のときの運動はどのようになるだろうか。

一般解を再掲する。

\begin{equation} x(t) = C\exp(-r_1 t) + D\exp(-r_2 t) \end{equation}

これを時間で微分すると速度が得られる。

\begin{equation} x(t) = -r_1 C\exp(-r_1 t) - r_2 D\exp(-r_2 t) \end{equation}

ここに初期値を入れてみよう。すると、

\begin{equation} x(0) = C+D = x_0 \end{equation}

\begin{equation} v(0) = - r_1 C - r_2 D = v_0 \end{equation}

この連立方程式を解けばよい。ここで  r_1 - r_2 = 2\Omega を用いると見通しが良くなる。計算すると

\begin{equation} C = \frac{r_2 x_0 - v_0}{r_2 - r_1} = \frac{(\mu + \Omega)x_0 + v_0}{2\Omega} \end{equation} \begin{equation} D = \frac{r_1 x_0 - v_0}{r_1 - r_2} = \frac{(\Omega - \mu)x_0 - v_0}{2\Omega} \end{equation}

したがって

\begin{equation} x(t) = \frac{(\Omega+\mu)x_0 + v_0}{2\Omega}\exp(-\mu+\Omega)t + \frac{(\Omega - \mu)x_0 -v_0}{2\Omega} \exp(-\mu-\Omega)t \end{equation}

が得られる。


ここから実際の運動をシミュレーションしてみよう。初期位置を1に正規化し、初期速度は0とする。すなわち「静かに手を離した」場合に相当する。

この場合の特殊解は次のようになる。

\begin{equation} x(t) = \frac{(\Omega+\mu)}{2\Omega}\exp(-\mu+\Omega)t + \frac{(\Omega - \mu)}{2\Omega} \exp(-\mu-\Omega)t \end{equation}

この特殊解の挙動を見てみる。

まず  \omega_0 = 2.0 ,\mu = 3.0の場合を見てみる。運動の x-t 図は次のようになる。なお、描画にはRust の plotters クレートを用いた。運動時間は40秒、刻み時間は0.01秒である。

過減衰するばね振り子のx-t図

やはり、もはや振動する様子は見られなくなっている。

ところで、こうなる寸前の運動はどのような様子になっているのだろうか。 \omega_0 = 2.0 ,\mu = 1.5の場合を見てみる。

このように、復元力がはたらいて元に戻ろうとしているが、ある場所で流体抵抗に負けてそこから戻れなくなっている様子がわかる。

では、もっと流体抵抗が大きい場合はどうなるのだろうか。より早く減衰するのだろうか?  \omega_0 = 2.0 ,\mu = 4.0の場合を見てみる。

どちらかというと緩やかに減衰しているように見える。もう少し数字を変えてみよう。 \omega_0 = 2.0 ,\mu = 8.0の場合を見てみる。

より緩やかに減衰している様子が見える。極端な数字を与えて確かめてみよう。 \omega_0 = 2.0 ,\mu = 200.0の場合を見てみる。

縦軸に注意してほしい。40秒かけて0.7の位置にしか届いていない。粘性が高いため、非常にゆっくりと運動している様子が描かれていると言える。

このように、流体の抵抗(粘性)が大きくなればなるほど、運動がゆっくりと進むことがわかる。自然長位置に戻るまでに、より時間がかかるということだ。

では逆に、最も素早く自然長まで減衰するのはどのようなときか? 上記の数値実験から、 \Omega = \mu のときではないかと推察される。この条件における運動を解析したいが、実は微分方程式を解く上で少々特殊なことが起きている。これについては次項にて解説したい。