真空の期待値

微積分を用いた高校物理教程

流体抵抗によるばね振り子の減衰振動(1)

いま解いている問題を再確認する。

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流体から抵抗力を受ける水平ばね振り子

このばね振り子の運動を記述する微分方程式は、

\begin{equation} \ddot{x} + 2 \mu \dot{x} + \omega_0 ^2 =0 \end{equation}

特性方程式は、

\begin{equation} (s + \mu) ^2 - \mu ^2 + \omega_0 ^2 =0 \end{equation}

この式から、どうやら \Omega ^2 =  \mu ^2 - \omega_0 ^2 の符号次第で解の性質が変わりそうだということがわかる。

今回は流体抵抗が小さいとき、すなわち特性方程式複素数解をもつ場合について考えてみよう。

減衰振動(流体抵抗が小さいとき)

流体抵抗を代表する係数  \mu と抵抗がないときの単振動の角振動数 \omega_0 を比較して \mu ^2 <  \omega ^2 のとき、特性方程式の解は次のようになる。

 \Omega = \sqrt{\omega_0 ^2 - \mu ^2} と置くと、

\begin{equation} s_1 = -\mu + i \Omega, \quad s_2 = -\mu - i \Omega \end{equation}

一般解は、

\begin{equation} x(t) = C \exp(-\mu t + i \Omega t) + D \exp(-\mu t - i \Omega t) \end{equation}

くくりだして、

\begin{equation} x(t) = \exp(-\mu t) (C \exp(i \Omega t) + D \exp(-i \Omega t)) \end{equation}

さらに三角関数の合成を用いると、

\begin{equation} x(t) = A \exp(-\mu t) \sin(\Omega t + \delta) \end{equation}

となる。

抵抗のない場合との比較

全く抵抗がない場合、単振動を記述する微分方程式の一般解は次のようであった。

\begin{equation} x(t) = A \sin (\Omega t + \delta) \end{equation}

比較すると、指数関数  \exp( - \mu t) 倍だけ異なっていることがわかる。この部分は指数減衰といって、急速に運動が減衰する様子を表している。それに三角関数がかかっているので、流体抵抗がある場合のばね振り子は振動しつつ急速に振幅が減少していくことになるだろう。

物理的考察

具体的な問題設定のもとで観察してみよう。

この方程式が記述できる現象の設定にはいくつかのバリエーションがある。まず安直には、床の摩擦力を無視したうえで空気抵抗を加味するというものだ。しかしこれはいささか現実的でないと思われるかもしれない。もしそうなら、こういうのはどうだろうか。水中にばね定数の大きなばね振り子があって、水の流体抵抗を受けて減衰するという設定だ。もっと現実的には、油のような粘性のある流体の中にあるばね振り子の運動と考えてもよい。

いずれにしても、この解から分かるようにばね振り子は左右に振動しながら減衰する。振動数は  \Omega で代表され、減衰の度合いは  \mu で特徴づけられる。

では、時刻  t=0 のとき、初期位置  x_0 , 初期速度  v_0 = \dot{x} = v_0 のときの運動はどのようになるだろうか。

一般解を再掲する。

\begin{equation} x(t) = A \exp(-\mu t) \sin(\Omega t + \delta) \end{equation}

これを時間で微分すると速度が得られる。

\begin{equation} v(t) = \dot{x} = A \exp(-\mu t)( -\mu \sin(\Omega t + \delta) + \Omega \cos(\Omega t + \delta)) \end{equation}

ここに初期値を入れてみよう。すると、

\begin{equation} x(0) = A \sin \delta = x_0 \end{equation}

\begin{equation} v(0) = A( -\mu \sin \delta + \Omega \cos \delta) = v_0 \end{equation}

この連立方程式を解きたいが、直接\deltaを求めるのは少し大変だ。そこで A\sin \delta, A\cos\delta の値を求めよう。

\begin{equation} A\sin\delta = x_0, A\cos\delta = \frac{v_0+\mu x_0}{\Omega} \end{equation}

ただ、このままだと様子が見づらい。手戻りになってしまうが一般解を書き直す。加法定理を用いて三角関数を分解しておこう。


x(t) = A \exp(-\mu t) \sin(\Omega t + \delta) \\
= A \exp(-\mu t) ( \sin \Omega t \cos \delta + \cos \Omega t \sin \delta) \\
= A \cos\delta×\exp(-\mu t) \sin \Omega t+ A \sin\delta ×\exp(-\mu t)\cos \Omega t


v(t) = A \exp(-\mu t)( -\mu \sin(\Omega t + \delta) +  \Omega \cos(\Omega t + \delta))\\
 = A \exp(-\mu t)( -\mu (\sin\Omega t \cos\delta + \cos\Omega t \sin\delta)+  \Omega (\cos\Omega t \cos \delta - \sin\Omega t\sin \delta))\\
= (-\mu A\cos\delta - \Omega A\sin\delta)  \exp(-\mu t)\sin\Omega t+ (-\mu A\sin\delta + \Omega A\cos\delta) \exp(-\mu t) \cos\Omega t

ここにAと  \delta を代入してみよう。


x(t)= \frac{v_0+\mu x_0}{\Omega} \exp(-\mu t) \sin \Omega t+ x_0\exp(-\mu t)\cos \Omega t


v(t) = (-\mu \frac{v_0+\mu x_0}{\Omega} - \Omega x_0)  \exp(-\mu t)\sin\Omega t+ v_0 \exp(-\mu t) \cos\Omega t

気合いで一つの三角関数にまとめることはできるが、このままでも運動の解析はできるからこれを一般解としよう。


ここから実際の運動をシミュレーションしてみよう。初期位置を1に正規化し、初期速度は0とする。すなわち「静かに手を離した」場合に相当する。

この場合の特殊解は次のようになる。


x(t)= \frac{\mu}{\Omega} \exp(-\mu t) \sin \Omega t+\exp(-\mu t)\cos \Omega t


v(t) = (-\mu \frac{\mu}{\Omega} - \Omega )  \exp(-\mu t)\sin\Omega t

この特殊解の挙動を見てみる。

まず  \omega_0 = 2.0 ,\mu = 0.2の場合を見てみる。運動の x-t 図は次のようになる。なお、描画にはRust の plotters クレートを用いた。運動時間は40秒、刻み時間は0.01秒である。

減衰振動するばね振り子のx-t図 omega=2.0,mu=0.2

では流体抵抗を大きくしてみよう。  \omega_0 = 2.0 ,\mu = 0.4 の場合の図は次のようになる。

減衰振動するばね振り子のx-t図 omega=2.0,mu=0.4

逆に流体抵抗を小さくするとどうなるだろうか。 \omega_0 = 2.0 ,\mu = 0.1 の場合の図は次のようになる。

減衰振動するばね振り子のx-t図 omega=2.0,mu=0.1

たぶんこの図が一番わかりやすいだろう。ばね振り子は振動しながら減衰し続けていくが、この減衰の仕方は指数関数的である。包絡線を目で追ってみると、 \exp(-\mu t) のように肩が負の数の指数関数が何となくみえそうではないだろうか。

念のため、流体抵抗が全くない場合も見てみよう。

減衰がない場合のばね振り子のx-t図

このように、  \mu = 0 の極限ではきちんと理想的なばね振り子の運動に戻ることが分かった。

では逆に  \mu = \omega_0 の場合や、  \mu >  \omega_0 の場合はどうなるだろうか。次項で見ていきたい。

流体抵抗によるばね振り子の減衰振動(0)

ここまでばね振り子の単振動を見てきた。

水平方向のばね振り子はこちら。

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垂直方向のばね振り子はこちら。

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摩擦力によるばね振り子の減衰振動はこちら。

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今回は速度に比例する抵抗力(流体抵抗)を扱っていく。

流体抵抗を受けた減衰振動の設定

流体から受ける抵抗力

流体から受ける抵抗力が無視できない場合、ばね振り子の運動は減衰する。ここで小球はその速度に比例する抵抗力  f の影響を受けるものとする。この場合、流体抵抗は次の式で表すことができる。

\begin{equation} f = - \gamma v \end{equation}

 \gamma は正の比例定数、 vは小球の速度である。

では具体的に問題を設定していこう。

流体から抵抗力を受ける水平ばね振り子

流体から抵抗力を受ける水平ばね振り子

小球にかかる力を確認する。

  • 水平方向:ばねの復元力  -kx、流体からの抵抗力  \gamma v

運動方程式は、

\begin{equation} ma = -kx - \gamma v \end{equation}

となる。これを解いていこう。

数学的処理

微分方程式を解く

全体を  m で割って、

\begin{equation} \ddot{x} = -\frac{k}{m}x - \frac{\gamma}{m} \dot{x} \end{equation}

ここで  \omega_0 ^2 = k/m と定義する。ゼロがついているのは、この角振動数があくまでも抵抗がないときの小球の運動に由来するからだ。いまは速度に比例する抵抗を受けているので、全体の角振動数はこの値とは異なる。

さらに速度にかかる係数も整理したい。これは後知恵だが、  \gamma = 2 m \mu と置いてみよう。すると、

\begin{equation} \ddot{x} = -\omega_0 ^2 x - 2 \mu \dot{x} \end{equation}

左辺に整理して、

\begin{equation} \ddot{x} + 2 \mu \dot{x} + \omega_0 ^2 =0 \end{equation}

この方程式は二階線形微分方程式で、斉次型の方程式である。そこで、特性方程式を用いた微分方程式の解法で解決するはずだ。

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特性方程式

解として  x_s = \exp(st) を仮定して代入してみると、

\begin{equation} s ^2 + 2 \mu s + \omega_0 ^2 x =0 \end{equation}

これがいま解いている微分方程式特性方程式である。この方程式を解くにあたって平方完成を試みると、

\begin{equation} (s + \mu) ^2 - \mu ^2 + \omega_0 ^2 =0 \end{equation}

1次の係数に2がついていたおかげできれいな式になった。

この式から、どうやら \Omega ^2 =  \mu ^2 - \omega_0 ^2 の符号次第で解の性質が変わりそうだということがわかる。具体的には、 \Omega ^2 が正のときは実数解、負のときは複素数解、0のときは重解を持つことになる。たったそれだけのことなのだが、この三つの運動はまるで異なる挙動を示す。次回から一つずつ見ていくことにしよう。

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摩擦力によるばね振り子の減衰振動

ここまでばね振り子の単振動を見てきた。

水平方向のばね振り子はこちら。

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垂直方向のばね振り子はこちら。

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これらの例では物体に働く抵抗力は無視してきた。実際には床の摩擦であったり、流体(空気や水)の抵抗力を受けて振動は次第に小さくなり、最終的に運動が停止する。現実にみられる運動に近いのはこちらのほうだろう。いよいよ現実に近い運動を分析することができる。

それだけではない。ここで出てくる微分方程式は別の単元でもちょくちょく出てくるのだ。その意味で、ここで学んだことは非常につぶしがきく。

減衰運動と一口にいってもいくつかの種類がある。ここでは一定の抵抗力を常に受け続けるタイプ(動摩擦力)を扱うことにする。次回以降、速度に比例する抵抗力(流体抵抗)を扱っていく。

摩擦力を受けた減衰振動の設定

床から受ける摩擦力

床から受ける摩擦力が無視できない場合、ばね振り子の運動は減衰する。ここで小球は垂直抗力に比例する動摩擦力  f の影響を受けるものとする。(静止摩擦力は動摩擦力より大きいのが通常だが、今回は同じ大きさとする)。

この場合、動摩擦力は次の式で表すことができる。

\begin{equation} f = \mu N \end{equation}

 \mu は動摩擦係数、  N は小球にかかる垂直抗力である。

では具体的に問題を設定していこう。

摩擦力を受ける水平ばね振り子

摩擦力を受ける水平ばね振り子

小球にかかる力を確認する。

  • 垂直方向:鉛直下向きの重力  mg、鉛直上向きの  N
  • 水平方向:ばねの復元力  -kx、動摩擦力  \mu N

まず垂直方向の力のつり合いから、

\begin{equation} N = mg \end{equation}

すると動摩擦力  f の大きさは、

\begin{equation} |f| = \mu mg \end{equation}

と書けることがわかる。問題は向きで、右向きに動いているときの動摩擦力は左向き、左向きに動いているときの動摩擦力は右向きである。これを表現するために、符号  \mathrm{sgn}(a) を次のように定義する。

\begin{equation} \mathrm{sgn}(a) = \begin{cases} 1 \quad(a>0) \\ 0 \quad(a=0) \\ -1 \quad(a<0) \end{cases} \end{equation}

こうすることで、動摩擦力は向きも含めて次のように書ける。

\begin{equation} f = \mu mg \cdot \mathrm{sgn}(v) \end{equation}

これで役者がそろった。運動方程式は。

\begin{equation} ma = -kx - \mu mg \cdot \mathrm{sgn}(v) \end{equation}

となる。これを解いていこう。

数学的処理

微分方程式を解く

全体を  m で割って、

\begin{equation} \ddot{x} = -\frac{k}{m}x - \mu g \cdot \mathrm{sgn}(\dot{x}) \end{equation}

 \omega ^2 = k/m と定義して、  x に関する式を左辺に集めると、

\begin{equation} \ddot{x} + \omega ^2 x = - \mu g \cdot \mathrm{sgn}(\dot{x}) \end{equation}

この方程式は一筋縄には解けない。まず非斉次の微分方程式であることと、  \dot{x} の符号によって式の形が異なることの二つの悩みがある。符号によって式が変わることについては、仕方がないので場合分けするほかない。まずは速度の向きによる場合分けをしてみよう。

 \dot{x} >0 のとき

このとき解くべき微分方程式は次のようになる。

\begin{equation} \ddot{x} + \omega ^2 x = - \mu g \end{equation}

この方程式の解は、斉次方程式の基本解に右辺を加味した特別解が加わったものと考える。斉次方程式の解はおなじみのこの形だ。

\begin{equation} x(t) = A \sin(\omega t + \delta) \end{equation}

これに特別解  x_p(t) が加わる。といっても右辺は定数であるから、特別解も定数になるはずだ。そこで  x_p(t) = C と置いてもとの微分方程式に代入すると、

\begin{equation} 0 + \omega ^2 C = -\mu g \therefore C = -\frac{\mu g}{\omega ^2} \end{equation}

ここで、鉛直方向に伸びたばね振り子を思い出してほしい。重力の影響で釣り合いの位置が  l_0 = \frac{mg}{k} だけ自然長位置からずれていたのだった。ここで  \omega ^2 = k/m を使うと、 C はつぎのように簡単にできる。

\begin{equation} C = -\frac{\mu g}{\omega ^2} = -\frac{\mu mg}{k} = -\mu l_0 \end{equation}

よって一般解は、

\begin{equation} x(t) = A \sin(\omega t + \delta) - \mu l_0 \end{equation}

となる。

ここで出てきた  \mu l_0 は、動摩擦と復元力が釣り合う長さを表している。

 \dot{x}< 0のとき

このとき解くべき微分方程式は次のようになる。

\begin{equation} \ddot{x} + \omega ^2 x = \mu g \end{equation}

よくみると右の定数項が符号を変えただけになっている。ということは基本解は同じで、特別解の符号が変わるだけだということができる。よって一般解は、

\begin{equation} x(t) = A \sin(\omega t + \delta) + \mu l_0 \end{equation}

となる。

物理的考察

定数を決定する

この解は、半周期ごとに振幅を小さくしながらいずれ止まる。すなわち、半周期ごとに解を接続しなければならない。そこで、具体的な初期条件を設定して一歩ずつ考えていく必要がある。

まず最初の半周期は簡単だ。手を離した位置を  x_0=l とすると、例によって

\begin{equation} x(t) = (l - \mu l_0) \cos(\omega t) + \mu l_0 \quad (0<t<T/2) \end{equation}

が得られる。

次の解は、初期位置  x_1 = -l + 2 \mu l_0 から始まるのだが、釣り合いの位置は  x = - \mu l_0 に変わるので、振幅は  A = l - 3\mu l_0 となる。よって

\begin{equation} x(t) = (l - 3\mu l_0) \cos(\omega t) - \mu l_0 \quad (T/2<t<T) \end{equation}

さらに次の解は、初期位置  x_2 = l - 4 \mu l_0 から始まるのだが、釣り合いの位置は  x = + \mu l_0 に変わるので、振幅は A = l - 5\mu l_0 となって

\begin{equation} x(t) = (l - 5\mu l_0) \cos(\omega t) + \mu l_0 \quad (T<t<3T/2) \end{equation}

このようにどんどん振幅が小さくなっていく。

振動はいつ止まるのか?

止まるパターンは2つある。ひとつは端点で速度がゼロになったとき、復元力が静止摩擦力に負けて動かなくなるパターン。もうひとつは運動中であっても復元力が動摩擦力に負けて動かなくなるパターンだ。

今回は後者を扱う。

運動中であっても復元力が動摩擦力に負けて動かなくなるということは、次の式が成り立つ。

\begin{equation} kx \leq \mu mg \end{equation}

等号が成り立つ条件を見たい。  k で割って整理すると、次のようになる。

\begin{equation} x = \mu \frac{mg}{k} = \mu l_0 \end{equation}

これが釣り合いの位置である。運動中のすべての  x で釣り合いの位置より内側に入っているとき、もはや復元力より動摩擦力のほうが大きいので運動は静止する。

流体中のばね振り子

今回は摩擦のある平面で振幅を変えながら運動するばね振り子を解析した。高校物理では明示的に扱わないが、微積分を用いて数式を立てると運動の様子が見えてくる。(もっとわかりやすくするために運動の様子を図解する予定)

次回は流体中のばね振り子を扱う。速度に応じて摩擦力が変わる場合はどうなるのだろうか?

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鉛直方向のばね振り子

前回は摩擦のない床の上を滑るばね振り子について考えた。

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では、ばね振り子が鉛直方向に運動する場合はどうなるだろうか? この場合は重力の影響を受けて振り子の原点が自然長位置から少し下になることに注意したい。どこを原点に取るかによって単振動の表現が少し変わってくる。しかし運動方程式は同じなので、裏側にある物理は全く一緒であることを確認したい。

ばね振り子の設定(原点を釣り合いの位置にとったとき)

釣り合いの位置に原点をとったばね振り子

上図は、ばね定数  k のばねの先に質量  m の小球がついている様子を描いたものだ。違うのはばねが鉛直方向に向いているということだ。

小球の位置を y で表そう。空気抵抗は無視する。ばね振り子を設置してしばらく放置しておくと、ある場所で小球が静止する。しかしこの位置は自然長ではない。小球にかかる重力があるので少しだけ鉛直下向きに伸びているのだ。ではどれだけ伸びているのか。

自然長からの伸びを  l_0 と置くと、力のつり合いから次の式が成り立つ。

\begin{equation} kl_0 = mg \end{equation}

よって、釣り合いの位置は自然長から  l_0 = mg/k だけ伸びた場所にあるということがわかる。

 y 軸の原点を釣り合いの位置に取り、下方向を正にとることにしよう。

この小球を少しだけ下に( y が正の方向に)  l だけ引っ張ることにする。そして手を離す。

鉛直方向に伸びたばね振り子の初期設定

すると、ばね振り子はやはり単振動を始めるだろう。問題は、今回の設定だと重力の影響があるためどの範囲で単振動するかは自明ではないということだ。もしかしたら  -l の位置までいかないかもしれない。ここに注目しながら式を追ってみよう。

小球にかかる力を  F としたとき、小球にかかっている力はばねから受ける復元力と、重力である。これを式に表すと次のように……なるだろうか?

\begin{equation} F = -ky + mg (?) \end{equation}

この式は間違っている。なぜなら、 y 軸原点は自然長位置ではないから、 y=0 においてばねの復元力は  l_0 分だけかかっているはずだからだ。とすると、この式は次のように修正されなければならない。

\begin{equation} F = -k(y + l_0) + mg \end{equation}

ここで  l_0 = mg/k を代入すると

\begin{equation} F = -ky \end{equation}

このようにシンプルな形に戻る。よって、このばね振り子は原点=釣り合いの位置を中心に、振幅  y_0 で単振動することがわかる。つまり、摩擦のない床の上を滑るばね振り子と全く同じ運動をする。

結論として、微分方程式の解は次のようになる。

\begin{equation} y(t) = l \cos \omega t \end{equation}

ばね振り子の設定(原点を自然長の位置にとったとき)

では、原点を自然長の位置にとった場合はどうなるだろうか。

自然長の位置に原点をとったばね振り子

この場合の運動方程式は、今度こそ次のようになる。

\begin{equation} F = -ky + mg \end{equation}

この小球を釣り合いの位置から下に  l だけ引っ張ることにする。そして手を離す。

鉛直方向に伸びたばね振り子

このときの運動はどのように記述されるだろうか? 運動方程式を解いて考察してみよう。

数学的処理

運動方程式を解く

この設定における運動方程式は、

\begin{equation} ma = -ky +mg \end{equation}

となる。これは単振動の運動方程式に少し余計な項がついたものになっている。この微分方程式を解いていこう。

両辺を  m で割って、

\begin{equation} a = -\frac{k}{m} y +g \end{equation}

ここでの加速度は  a = \ddot{y} である。 \omega ^2 = k/m を導入すると、

\begin{equation} \ddot{y} = -\omega ^2 y +g \end{equation}

となる。

微分方程式の解

この微分方程式を解いていく。解き方は特性方程式を用いる方法にしよう。

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解はどうせ  \exp(t) のような形をしているのだから、微分方程式 y_s = \exp(st) を代入してみる。二階微分すると  s が2つ前に出てくるから、特性方程式は、

\begin{equation} s ^2 = -\omega ^2 + g \end{equation}

このままだと  s が求まらない。実は今回の微分方程式は非斉次線形微分方程式と呼ばれるもので、少し工夫が必要になってくる。考え方としては、基本的な解が

\begin{equation} y(t) = A \cos (\omega t + \delta) \end{equation}

のような形をしていることは確かだとして、それに特別解 y_p(t) を加えたもの:

\begin{equation} y(t) = A \cos (\omega t + \delta) +y_p(t) \end{equation}

が解になるだろうと予想して解くことにする。ここで特別解  y_p(t) は、解全体を表す一般解ではなく、微分方程式の解になっている函数のうちの一つでいい。つまり  y_p(t) 自身が、微分方程式

\begin{equation} \ddot{y_p} = -\omega ^2 y_p +g \end{equation}

を満たす具体的な函数である。このような  y_p の探し方だが、典型的には元の微分方程式を(yに関する式)=(それ以外の式)の形に変形して

\begin{equation} \ddot{y} + \omega ^2 y = g \end{equation}

右辺(非斉次項)の次数を見て決める。この場合  g は定数であるから、特別解も定数だろうとにらむわけだ。そこで  y_p =C とおいて、微分方程式に代入すると

\begin{equation} 0 + \omega ^2 C = g \therefore C = \frac{g}{\omega ^2} = l_0 \end{equation}

を得る。よって求める微分方程式の解は、

\begin{equation} y(t) = A \cos (\omega t + \delta) + l_0 \end{equation}

となる。

非斉次な微分方程式がなぜこの方法で解けるのか不思議な方もいるかもしれない。これも行列(線形代数学)を使うと明晰に説明することができる。(工事中)

物理的考察

これで微分方程式は解けたのだが、まだ振り子がどんな運動をするかはわからない。次にこの解がどのような振る舞いをするかについて考察していこう。

定数の決定

まずは初期位相  \delta から考察を始める。これは素朴に  0 のように思えるのだが、実際には釣り合いの位置が  l_0 だけずれている影響がどのように出ているかはまだわからない。一応見てみよう。

ここで速度について考察する。 y(t)微分すると、

\begin{equation} \dot{y}(t) = -\omega A \sin (\omega t + \delta) \end{equation}

となる。ここで  t=0 のときの速度について調べると、これはゼロになるはずなので、

\begin{equation} \dot{y}(0) = -\omega A \sin \delta = 0 \end{equation}

整理して、

\begin{equation} \sin \delta = 0 \end{equation}

よって  \delta = 0 で問題ない。

次に振幅だが、変位  y の初期位置について調べると、釣り合いの位置から l だけ引っ張ったということは原点から数えると  y(0) = l + l_0 まで引っ張ったことになるので、

\begin{eqnarray} y(0) = A \cos \delta + l_0 = l + l_0 \end{eqnarray}

が成り立つ。ここから  \cos \delta = l/A であることがわかった。ここで  \delta = 0 であることから、自動的に  A = l が成立する。

以上のことから、求める解は

\begin{equation} y(t) = l \cos \omega t + l_0 \end{equation}

となった。

本当に同じ運動?

二つの解

\begin{equation} y(t) = l \cos \omega t \end{equation}

\begin{equation} y(t) = l \cos \omega t + l_0 \end{equation}

\begin{equation} ただし \omega = \sqrt{\frac{k}{m}} , l_0 =\frac{mg}{k} \end{equation}

 l_0 だけ違いがある。これは原点をとる場所の違いが反映されている。上の式の原点は釣り合いの位置、下の式は自然長位置にとったので、その差がちょうど  l_0 = mg/k だけ出ているとみていい。

つまりこの二つの解は、それぞれの設定で同じ運動を表している。

運動の中心はどこ?

いずれの解においても  \cos \omega t = 0 となる位置が運動の中心である。これは変位の式が完全に決定するまでは見抜きにくいが、速度と加速度を観察すればわかりやすい。

  • 速度は、振幅でゼロ、運動の中心で最大となる
  • 加速度は、振幅で最大、運動の中心でゼロになる

今回もその性質を用いて係数を決定した。この性質は単振動に共通している。

けっきょく運動の中心は、釣り合いの位置(自然長から  l_0 )にあることがわかる。これがあらかじめわかっているのであれば、釣り合いの位置を原点に取ったほうが微分方程式は解きやすい。

摩擦のある振動

これまで摩擦や抵抗力のない平面における運動をみてきた。次回は摩擦のある運動を扱う。

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ばね振り子の運動

単振動する物体の代表例としてばね振り子があげられる。ばね振り子の運動を理解することは微積物理において非常に重要なことだ。というのも、多くの物理現象は何かしらの意味で振動するので、ばね振り子のアナロジーを使うことができるからだ。この先、電磁気学や電子回路、熱力学、波動などの単元に触れることになるが、どの単元においても少し応用を利かせるとばね振り子のような単振動が出てくる。そこで、まずはばね振り子を用いて単振動に慣れておこう。

ばね振り子の設定

自然長の位置にあるばね振り子

上図は、ばね定数  k のばねの先に質量  m の小球がついている様子を描いたものだ。このようなばねと小球の組み合わせをばね振り子という。

小球の位置を x で表そう。床の摩擦は無視する。ばねに復元力がかからない位置、すなわち自然長の位置に小球を置いておくと何が起こるかーーもちろん何も運動しない。この状態で小球もばねも静止している。x 軸の原点をこの位置に取り、右方向を正にとることにしよう。

この小球を少しだけ右に( x が正の方向に)  x_0 だけ引っ張ることにする。そして手を離す。

ばね振り子の初期設定

するとどうなるかーー今度は左方向に動き始める。そして  -x_0 の位置まで行って、また右に運動する。この動きを永久に繰り返すのだ。これが単振動の基本的な運動である。

この運動を調べてみよう。小球にかかる力を  F としたとき、ばねの復元力は小球の自然長からの変位に比例する大きさで反対方向の力になる。これを式で書くと、

\begin{equation} F = -kx \end{equation}

数学的処理

運動方程式を解く

ニュートン運動方程式は次のような形だった。

\begin{equation} ma = F \end{equation}

 a は小球の加速度を表す。代入すると、

\begin{equation} ma = -kx \end{equation}

となる。これが単振動の運動方程式だ。

「単振動の基礎」でやったように、議論を進めていこう。

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加速度とは、変位の時間による二階微分であった。すなわち、

\begin{equation} a = \ddot{x} \end{equation}

これをつかうと、先ほどの運動方程式

\begin{equation} m \ddot{x} = -kx \end{equation}

微分方程式の形で書くことができる。

この方程式を解くためにもう一工夫してみる。両辺を  m で割って  \omega ^2 = k/m なる記号を導入しよう。二乗になっているのは、のちの式を楽にするための工夫である。この表記を使うと先ほどの微分方程式は、

\begin{equation} \ddot{x} = -\omega ^2 x \end{equation}

と書ける。あるいはライプニッツの記法を用いて、

\begin{equation} \frac{d ^2x}{dt ^2} = -\omega ^2 x \end{equation}

と書いてもよい。

微分方程式の解

この微分方程式を解いていく。解き方は特性方程式を用いる方法にしよう。

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解はどうせ  \exp(t) のような形をしているのだから、微分方程式 x_s = \exp(st) を代入してみる。二階微分すると  s が2つ前に出てくるから、特性方程式とその解は、

\begin{equation} s ^2 = -\omega ^2 \therefore s= i\omega \end{equation}

よって  \exp(i\omega t), \exp(-i \omega t) が基本的な解であることが分かった。そこでこれらの定数倍と和をとると

\begin{equation} x(t) = C_1 \exp(i\omega t) + C_2 \exp(-i \omega t) \end{equation}

となる。ここでオイラーの公式

\begin{equation} \exp(it) = \cos t + i\sin t \end{equation}

を用いて整理すると、

\begin{equation} x(t) = (C_1 + C_2) \cos \omega t + i(C_1-C_2) \sin \omega t \end{equation}

 C=C_1+ C_2, D=i(C_1-C_2) と置きなおすと、

\begin{equation} x(t) = C \cos \omega t + D \sin \omega t \end{equation}

となる。これでもいいのだが、三角関数の合成を用いて整理しなおすと、

\begin{equation} x(t) = A \sin (\omega t + \delta) \end{equation}

となって見やすい解を得た。

物理的考察

微分方程式を解くだけでは物理にならない。次にこの解がどのような振る舞いをするかについて考察していこう。

定数の決定

式に書かれている  A とか  \delta がそのままだと、具体的な運動が把握できない。今回のばね振り子の設定に従ってこの定数を決定しよう。

先に  A から片づける。これは振幅と呼ばれ、ばね振り子が原点から最も離れる距離を表している。今回の設定の場合、小球は  [-x_0,x_0]の間を運動するから、振幅は  x_0 である。 \begin{equation} x(t) = x_0 \sin (\omega t + \delta) \end{equation}

次に  \delta だが、これは初期位相と呼ばれ、 t=0 のときに小球がどの位置にいるかを表している。今回の設定の場合、 t=0 で小球は  x_0 の位置にいるのだから、 \sin \delta = 1 でなければならない。この  \delta ( -\pi, \pi] の中から選ぶとすると、サインが 1 になるような  \delta \pi/2 しかない。

\begin{equation} x(t) = x_0 \sin (\omega t + \frac{\pi}{2}) \end{equation}

このままだと少々気持ち悪い。三角関数の公式  \sin(x + \frac{\pi}{2}) = \cos x を用いて変形すると、

\begin{equation} x(t) = x_0 \cos \omega t \end{equation}

となってすっきりした。この函数が小球の位置を記述することになる。

振動の周期と振動数・角振動数

それぞれの定義

この小球が最初の位置から行って帰ってくるまで何秒かかるだろうか? これは  t>0 において  x(T) = x_0 となる最初の  T を見つけることで判明する。右辺は三角関数だから、小球が行って帰って戻ってくる時刻とは  \omega t = 2\pi を満たすときであることがわかる。よって

\begin{equation} T = \frac{2\pi}{\omega} \end{equation}

と置くと、 t= T のときに  x(T) = x_0 \cos \omega T = x_0 となって条件を満たす。

このような  T を振動の周期という。

この問題を反対にとらえて、1秒間に小球が何回行ったり来たりするだろうか? と考えることもできる。(もしかしたら1秒後にまだ向かい側にいて、一周もしていないかもしれない。この場合は"0.5回"ととらえることにする。)これは周期  T を用いて定義することができる。すなわち

\begin{equation} 周期がT \leftrightarrow 一周するのに T 秒かかった \leftrightarrow 1秒間に 1/T 周していることになる \end{equation}

という考察から、1秒間に行ったり来たりしている回数は  1/T と書ける。これを振動数と呼び、一般に記号  f が用いられる。

周期・振動数・角振動数の関係

この三者には明確な相互関係がある。まず振動数と周期の間には、定義から

\begin{equation} f =\frac{1}{T} \end{equation}

が言える。すると、 \omega と周期・振動数の関係は、

\begin{equation} \omega = \frac{2\pi}{T} = 2 \pi f \end{equation}

であることがわかる。特に、

\begin{equation} fT = 1,\quad \omega T = 2\pi \end{equation}

の関係が成り立つ。計算の際にときどきこれを使って簡略化することがある。

いままで特に説明もなく、ただ微分方程式を解くためだけに出てきた  \omega であるが、これにも角振動数という名前がついている。これは三角関数を念頭に定義された振動数の亜種である。今のところ、振動数  f のほうが意味が明確で使いやすそうにみえるのだが、二つの理由で  \omega が好まれる。一つは、三角関数の表記がすっきりすることだ。例えば  \sin \omega t f を用いて書き換えると、

\begin{equation} \sin 2\pi ft \end{equation}

のような形になる。 \omega を使うと余計な  2\pi を書く必要がなくなる。

ただ、実はそれだけではない。単振動について学び終えたのちに後述するので今は流してもらって構わないが、実は単振動は円運動との間に切っても切れない関係がある。その際に円運動の角速度  \omega と単振動の角振動数  \omega は完全に対応していることがわかるのだ。そこで、今後も理論の見通しをよくするために角振動数  \omega を使って記述していこう。

運動の様子を理解する

次に運動の様子を見てみよう。そのために、まず速度を把握することが重要である。

速度を計算する

速度は変位  x(t) の時間微分を用いて計算できるので書き下してみよう。

\begin{equation} v(t) = \dot{x} = \omega x_0 \sin \omega t \end{equation}

この式から何がわかるだろうか?

速度が最も速くなる(速度の絶対値が最大になる)のはいつかというと、この函数の形から  \omega t = \frac{\pi}{2}, \frac{3\pi}{2} のときであることがわかる。 t = \frac{\pi}{2\omega} のときの速度を求めると、  v (\frac{\pi}{2 \omega}) = \omega x_0 となることがわかる。

ところで、このままだ少々式が見づらい。周期  T = \frac{2\pi}{\omega} を用いて少しきれいにしよう。

\begin{equation} v_\text{max} = v(\frac{T}{4}) = \omega x_0 \end{equation}

このとき小球はどこにあるだろうか? 変位  x(t) の式に  t= T/4 を代入して確かめてみよう。

\begin{equation} x(\frac{T}{4}) = x_0 \cos \omega \frac{T}{4} = x_0 \cos \frac{\pi}{2} = 0 \end{equation}

ということで、原点にあることがわかった。現在の設定においては自然長位置とも一致する。

逆に速度が0になる点はどこかというと、

\begin{equation} v(t) = \omega x_0 \sin \omega t = 0 \therefore t= 0, \frac{T}{2}, T \end{equation}

\begin{eqnarray} x(0) = x_0 \cos 0 = x_0 \\ x(\frac{T}{2}) = x_0 \cos \omega \frac{T}{2} = -x_0 \\ x(T) = x_0 \cos \omega T = x_0 \end{eqnarray}

となることがわかる。要するに、小球は原点(自然長位置)で最速になり、振幅の位置で速度が0になる。

単振動の基本的な動き

まとめると、

摩擦のない床の上でばね振り子を伸ばして静かに手を離したとき:

  • 手を離した位置が振幅になる
  • 振幅の位置では速度が0になる
  • 原点(自然長位置)では速度が最速になる

ということがわかった。

今回は水平面を滑るばね振り子について考えた。次は鉛直方向に振れるばね振り子について考えよう。

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単振動の基礎

すべての物理は、ニュートン運動方程式  ma=F を出発点とした派生に過ぎない。これは量子力学相対性理論などの高等な物理学においても通底する大原則である。

力がはたらくとその向きに力の大きさに比例する加速度が生じる。この関係からすべてが出発するのだ。

ここで  F の具体形として変位  x の逆符号  -x に比例する力を考えてみよう。先に式ありきの議論になるが、物理的な具体例は後ほど検討していきたい。 比例定数を kとすると

\begin{equation} ma=-kx \end{equation}

ところで加速度とは変位の時間による二階微分であるから

\begin{equation} m\ddot{x}=-kx \end{equation}

変形して  \omega ^2=k/m とおくと

\begin{equation} \ddot{x}=-\omega ^2 x \end{equation}

となる。

この微分方程式の解は三角関数に限られる。なお、三角関数以外の解がないことの証明は難しい。常微分方程式の解の一意性定理というものがあって、たいていの場合は解の「概形」をひとつ見つければ他の形を探す必要はないのだ。だから最悪当てずっぽうでもよいのでひとつ「概形」を見つけるのが微分方程式の解き方の一つである。

逆に三角関数がこの微分方程式を満たすことは明らかである。サインにせよコサインにせよ、二階微分すれば符号が変わるからだ。

ただ、この「あてずっぽうの解」を見つけてからが少し大変である。実際、 \sin \omega t \cos \omega t微分方程式を満たす関数である。このような函数は無数にあるので、それらを統一的に書くとすればどうすればよいだろうか。

本書で考えている微分方程式は、たいていが線形微分方程式と呼ばれる種類にあたる。これはどのような微分方程式かというと、解となる函数の定数倍や、二つの解の和もまた微分方程式の解になっているようなものだ。このような微分方程式は、 x(t) 微分同士の積がないことが条件だ。  (dx(t)/dt) ^2  x(dx/dt) のような項が入っていると、この和と定数倍も解になるという性質は成り立たなくなる。(一方で、非線形微分方程式でも解の一意性は成り立つ。探すのが面倒になるだけだ。)

では解を書き下してみよう。 \sin \omega t \cos \omega t微分方程式を満たす関数であるから、これらの定数倍と和をとって、

\begin{equation} \x(t) = C_1 \sin \omega t + C_2 \cos \omega t \quad C_1,C_2:const. \end{equation}

と書ける。これですべての解の可能性を網羅したことになる。

あるいは次の書き方をしていいかもしれない。

\begin{equation} x=A\sin(\omega t+\delta) \end{equation}

ただし  A, \delta は任意の定数である。 C_1,C_2 もそうだったが、これらは具体的な設定の下で値を決めることができる。例えば、運動を始める最初の位置と速度が設定中に現れるが、それが決まると計算によって具体的な係数がわかるようになる。

この式はサインで書かれている。別にコサインでもよいのだが、どっちにしろ δを調整すれば同じこと( +\frac{\pi}{2}すればよい)なので慣例的にサインを使うことにする。

ここで簡単にため A=1,\delta=0とすると、

\begin{equation} x=\sin\omega t \end{equation}

となる。

これを一回微分してみよう。速度は

\begin{equation} v=dx/dt=ω\cosωt \end{equation}

もう一回微分すると加速度が出て

\begin{equation} a=dv/dt=-\omega ^2\sinωt \end{equation}

ここでまたサインが出てきた。変位 x = \sin \omega tの定数倍になっているので、

\begin{equation} a=-\omega ^2x \end{equation}

が成り立つ。無事に三角関数が解となっていることがわかった。

ここで記事は二つに分岐する。微積分を用いて物理的考察を加えたい場合は、以下の記事からはじまるシリーズで単振動の考察を続けることにしよう。

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一方で、数学的に置いてきぼりになってしまったのでもう少し丁寧に解説が欲しい場合には、以下のシリーズから簡単な微分方程式の解き方を学ぶのがよい。

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個人的におすすめの勉強法だが、まず物理的考察を深めるほうにいって、数学で詰まったら都度確認するほうが”微積物理”っぽい動きになる。あくまでも学習したいのは物理であるから、数学はツールとして使えるようになれば最低限クリアしたと思っていいだろう。あまり深入りすると逆に物理がわからなくなってしまう。大学生になってからも、数学の渦に取り込まれてしまった人を一定の割合で見かけるのだが……。